シャロン ディビス(1934-アメリカ)
難易度 4
作家「オスカー・ワイルド」の物語「若い王」より。
王が戴冠式の前夜に3つの夢を見る。
そのうちの最初の夢から、貧しい織り子の言葉を引用する。
無慈悲さと私欲の交錯するおそるべき夢の中に、
我々は万人に通じる苦悩を見る事が出来る。
==引用;「若い王」より==
「戦争になれば、強い者が弱い者を奴隷にするし、
平和になれば、金持ちが貧乏人を奴隷にする。
俺たちは生きるために働かなきゃいけないが、
やつらはせいぜい、生きて行くのにギリギリの
安い賃金しか与えてくれない。
やつらのために、朝から晩まで精を出して働いているのに、
やつらは金庫にどっさりと金を溜め込んでいやがる。
子ども達は早死にしてしまうし、
俺たちの愛すべき者の顔は、
険しくて憎憎しい顔になっちまう。
一生懸命ぶどうを踏んでも、ワインを飲むのは、
俺たちじゃない。
麦の種をまいても、俺たちの食卓には何もない。
俺たちは鎖に縛られてるんだよ。
その鎖は誰にも見えねえけど。
俺たちは奴隷さ、
人からは自由だと呼ばれるけど。
「みんなそうなのかい?」 (若い王子が尋ねる)
「そうだよ。老いも若きも、男も女も、爺さん婆さん、子供までね。」
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演奏について -
奏者はセクションごとに組み合わせを変えてペアとなり、
ピアノとクラリネットのソロ・カデンツァを挟んで、
次のセクションへと進む。
中間セクションは、ソプラノとクラリネットによるメリスマティック*な
カノン形式である。
続くセクションでは冒頭のモチーフが再現され、ソプラノとピアノによる
本作品の表現が怒りを込めて反復される。
コーダでは静かなエンディングを迎えるが、
ここで初めて3人のアンサンブルを聴く事が出来る。
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新聞社 ロサンゼルスタイムズ紙 評論
労働者階級の苦悩を糾弾する一節を用いる事によって、
ギロチンへ向かう死刑囚護送車を連想させる作品となっている。
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試聴 -